
この記事では、長女が1歳の頃にみられた「自閉スペクトラム症(ASD)の特徴」についてお話ししています。
1歳の頃にみられたASDの特徴

ここまで育児日記を振り返ってみて、1歳の頃のあおいちゃんには自閉スペクトラム症の特徴があったと思いますか?
今思えば、
- テレビを長時間見続ける
- 常同行動がみられる
- 言葉の遅れ
- 指さしをしない
- 「新しいこと」が苦手
- クレーン現象
- 睡眠障害
という特徴があったと思います。
ただこれらの特徴も、自閉スペクトラム症の赤ちゃんすべてにみられる行動というわけではありません。
テレビを長時間見続ける

あおいちゃんは、1歳になったばかりの頃からジブリ映画を最初から最後まで見続けることができたんですよね
そうなんです。あおいはその頃から、テレビを2時間近く見続けることができるようになっていました。

そんなふうに「テレビを長時間見続ける」ことができるのは、自閉スペクトラム症の赤ちゃんの特徴なんでしょうか?
テレビを長時間見続けるからといって、必ずしも自閉スペクトラム症であるとは限りません。
ただ、自閉スペクトラム症の子どもは親を求める力が弱く、結果としてテレビを見続けることができる場合があるようです。
Q3 テレビが自閉症をつくると聞きました。テレビは見せちゃいけないの?
A 定型発達の乳幼児は、親がいくらテレビにお守りをさせようとしても、しばらくするとまとわりついて放ってはおけません。親を求める力が弱い子どもだったからこそテレビを見続けられたのです。つまりそれは自閉症スペクトラムの原因ではなく結果なのです。
『高機能自閉症・アスペルガー症候群 「その子らしさ」を生かす子育て 改訂版』吉田友子著
常同行動がみられる

「常同行動」は、あおいちゃんが0歳の頃からあったんですよね?
そうですね。あおいは生後9カ月の頃から「おうおうおう」と腕を振るという常同行動をしていました。
1歳の頃には、1歳4カ月の頃の「えいえい」とか、1歳7カ月の頃の「やーいやーいやーい、ほー」のように、新しい常同行動をしていましたね。


でも、あおいが1歳の頃の私は、相変わらず「常同行動」という言葉は知りませんでした。
言葉の遅れ

言葉の遅れというのは、自閉スペクトラム症の赤ちゃんの特徴なんですか?
言葉に遅れのない自閉スペクトラム症の赤ちゃんもいます。ただ、言葉の遅れは、自閉スペクトラム症の子どもの特徴として代表的なものです。
言葉の遅れは、自閉スペクトラム症の重要なサインの1つです。一般的には1才半ごろまでに3つ以上の単語が出てくるものですが、自閉スペクトラム症の場合、「ママ」「パパ」「ブーブー」などの意味のある単語が出ないことがあります。
赤ちゃん〜学童期 発達障害の子どもの心がわかる本 主婦の友社
1歳5カ月から「宇宙語」を話しはじめて、1歳7カ月の頃から家族にだけ意味の通じる「あおい語」を話しはじめたあおいが、はじめてはっきりと意味のある言葉を発したのは、1歳10カ月の頃でした。


1歳8カ月の頃に受けた1歳半健診では、「わんわんはどれかな?」という質問に指さしで答えることができなかったあおいを、保健師さんは「言葉に遅れがある」と判断していた———。振り返ってみると、そのことがあおいが1歳半健診後に「要観察」となった一番の要因だったと思います。

ただ、いつ頃から意味のある言葉を話しはじめるのかというのには、かなり個人差があるのも事実です。1歳半健診で言葉の遅れを指摘されたからといって、自閉スペクトラム症などの発達障害があるとは限りません。
指さしをしない
「指さしをしない」というのは、自閉スペクトラム症の特徴なんですか?
乳幼児期の早い時期に指さしがみられないことは、自閉スペクトラム症の子どもによくあるらしいんです。
乳幼児時期早期に指差しがみられないとか出現が遅れるといったことは自閉症スペクトラムの子どもの発達経過でよく報告されることです。
高機能自閉症・アスペルガー症候群「その子らしさ」を生かす子育て 吉田友子著 中央法規
定型発達では、赤ちゃんは0歳の頃から自分の気に入ったものを指さすようになり、次には要求のために指さしを使うようになるそうです。
さらに要求があるのではないけれど色々な情報や感情を共有したくて指さしを使うようになる———というように、指さしはどんどんその機能が発展していくそうですが、1歳の頃のあおいはまだ指さしをしていませんでした。
(前略)
このように指差しやまなざしなどの非言語的手段を使って相手を同じものに注意を向け情報や感情を共有することをジョイント・アテンション(共同注意)といいます。定型発達ではジョイント・アテンションとしての指差しは教えなくても一歳半ごろまでに出現します。自閉症スペクトラムではこうした指差しが出現しにくかったり奇妙だったりします。
高機能自閉症・アスペルガー症候群「その子らしさ」を生かす子育て 吉田友子著 中央法規
私と情報と感情を共有する「ジョイントアテンション」としての指さしも、1歳の頃のあおいには見られなかったんです。
「新しいこと」が苦手

「新しいことが苦手」というのは、具体的にはどういったことですか?
1歳の頃のあおいの様子でいうと、
- ずっと「はいはい」をしていて、なかなか歩き出さない
- 歩けるようになっても、外で歩くことや階段を怖がる
- 歯みがきを嫌がる
- 手づかみ食べをあまりしない
- 偏食
というのが、「新しいことが苦手」ということを示す具体的なエピソードだったと思います。
「新しいことが苦手」というのも、自閉スペクトラム症の赤ちゃんにみられる特徴なんですか?
もちろん、自閉スペクトラム症でなくても、「性格的に怖がりだったり慎重だったりするだけ」という場合もあると思います。
ただ「新しいことに手を出したがらない」というのは、自閉スペクトラム症の特徴の1つなんです。
新しいことに手を出したがらない▼社会的イマジネーション障害があると試したことのないことに挑戦することを嫌います。できそうな課題でも何度もほかの子どもがするところを見てからでないと手をつけないとか、食べたことのない食品は食べようとはしないとか。
高機能自閉症・アスペルガー症候群「その子らしさ」を生かす子育て 改訂版 吉田友子監修 中央法規出版株式会社
長かった「はいはいの期間」怖がった「外歩きや階段」

あおいが1歳の頃、はいはいの時期が長かったことや、歩けるようになっても外で歩くことや階段は怖がったこと。それは、振り返ってみると「新しいことが苦手」という自閉スペクトラム症の特徴だったと思います。
芳井さんは、1歳の頃のあおいちゃんのそんな様子に違和感を覚えたことはありましたか?
そうですね。今振り返ってみると、「あれ?」と思うことはありました。
広い公園で歩かせてあげたら喜ぶだろうなと思ったのに、怖がって一歩も歩かない。上手に登れると思った階段も、怖がって登らない。
そんな様子に、私は一瞬「あれ?思っていた反応と違うな」と思っていたんです。
でも、「あれ?」と思ったのは一瞬だったんですね
はい。公園で歩かなかったり、階段に登れなかったりするあおいに、私はすぐに「まぁ、そうか」と納得していました。
あおいは、こわがりで慎重な性格だからそんな反応になるんだなって。そう思って、気にしていなかったんです。
「歯みがき」「手づかみ食べ」「偏食」

あおいちゃんが1歳の頃「歯みがきを嫌がる」「手づかみ食べをしない」「偏食」という様子があったのも、「新しいことが苦手」だったからなんでしょうか?
あおいの場合は、そうだったと思います。
自閉スペクトラム症の赤ちゃんの中には、感覚過敏が原因で歯みがきを嫌がったり、手づかみ食べをしなかったり、偏食だったりする場合も多いです。
口の中に歯ブラシが触ると痛い。手が汚れるのが苦手で食べ物を触れない。味覚が過敏で特定のものしか食べられない……ということがあるんです。
自閉スペクトラム症の特性をもつ子どものなかには、さまざまな感覚にかたよりがあるため、ほかの人がほとんど気にとめないような刺激でも強烈に感じて、強いストレスを感じる子どもがいます。過敏な感覚が、癇癪やパニックを引き起こす原因となっている場合もあります。
発達障害の子どもの心と行動がわかる本 田中康雄 監修 株式会社 西東社
あおいの場合は、聴覚と嗅覚には軽度の感覚過敏がみられます。ただ、他の感覚はあまり過敏ではないんです。
だから今振り返ってみると、1歳の頃の「歯みがきを嫌がる」「手づかみ食べをしない」「偏食」の原因も、「新しいことが苦手」という自閉スペクトラム症の特徴だったと感じています。
偏食については、芳井さんは「自分に似たんだろうな」と思っていたとのことでしたよね。子どもの頃の芳井さんも、あおいちゃんと同じように「新しいことが苦手」だったから苦手な食べ物が多かったんでしょうか?
私の偏食は、「新しいことが苦手」というよりも「味覚過敏」が原因だったと思います。
私が子どもの頃に一番嫌いだったのはお豆腐なんですが、「『まずい水』に『青臭い豆』を溶かしたような味」だと感じていました。口に入れても「おえっ」となって涙が出て……飲み込めなかったんです。
お豆腐に「水」の味を感じていたんですね
でも成長するにつれて、その味覚過敏が和らいだのと、食べ物のいろんな「旨み」を感じ取れるようになって、私の偏食は治りました。
ただ、ここでは詳しくお話ししませんが、あおいが偏食を克服していく様子は私とは違っていたんです。
だから、同じように偏食の傾向があっても、私とあおいとでは原因が違っていたのだと思います。
クレーン現象

「クレーン現象」というのは、どういう意味なんですか?
「クレーン現象」は、自分の望みを叶えるために言葉で要求したり自分の手を使うのではなくて、まるでクレーンを操縦するように人の手を使う様子を指す言葉です。自閉スペクトラム症の子どもによく見られる行動なんです。
クレーン現象
自閉スペクトラム症の子どもに見られる様子。自分の手のかわりに相手の手を使う様子を、クレーン操縦にたとえている。たとえば、りんごが欲しい時に自分ではとらず、相手の手をりんごに持っていってとらせる。
赤ちゃん〜学童期 発達障害の子どもの心がわかる本 株式会社 主婦の友社
振り返ってみると、あおいが1歳10カ月の頃から増えていた「手を引っ張って要求する」という行動は「クレーン現象」でした。
「クレーン現象」は、自閉スペクトラム症の子どもにだけ見られる行動なんでしょうか?
そんなことはありません。定型発達(発達障害ではない)でも、小さい頃にはクレーン現象で何かを要求することはあります。
カナー型の自閉症では、幼児期を中心として常同行動やクレーン現象がしばしば見られます。特に二〜四歳のカナー型の自閉症で見られますが、実は通常の発達を経ている乳幼児でも見られることがあります。
自閉症スペクトラム障害ー療育と対応を考える 岩波新書 平岩幹男著
芳井さんは1歳10カ月の頃のあおいちゃんのクレーン現象に、何か違和感を覚えたことはあったんですか?
私はこの頃のあおいのクレーン現象には、違和感を覚えたことはありませんでした。
お腹が空くと、私の手をひっぱって冷蔵庫に連れて行く様子には、「自己主張ができるようになってきた」「何をして欲しいのかよくわかる」。お店のぬいぐるみやはじめての雪を私に触らせようとする様子には、「お店のものを勝手に触ってはいけないとわかっている」「こわがり」。
私はそんなふうに思っていたんです。
「クレーン現象」という言葉も、それが自閉スペクトラム症の子どもによくみられる行動だということも、当時の私は知りませんでした。
睡眠障害

あおいちゃんは1歳の頃、睡眠障害があったんですか?ちゃんと眠れていなかったんでしょうか?
確かに「睡眠障害」というと「不眠」のイメージが強いですよね。でも、1歳の頃のあおいにみられた睡眠障害は不眠ではありません。
1歳の頃のあおいの「夜泣き」と「昼寝後」の大泣き。それが、今振り返ってみると睡眠障害の1つである「錯乱性覚醒」だったと思うんです。
錯乱性覚醒?それは、どういった睡眠障害なんでしょうか?
少し長くなるので、次の記事でご説明します。
まとめ
今回は、長女が1歳の頃にみられた「自閉スペクトラム症の特徴」についてお話ししました。
ただし、ここで説明した内容についても、同じ特徴がある=自閉スペクトラム症(ASD)と判断できるものではありません。
あくまでも、あおいが診断を受けて10年経った今振り返ってみると、あれは自閉スペクトラム症の特徴だったと思える———というものです。


